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『BANDAGE』
[感想 -COMMENT-]


映画「BANDAGE」見てきました。


高校生の北野きいが、架空のロックバンド「LANDS」のライブに誘われて、そこでボーカルの赤西仁と知り合う事になります。
この2人のケータイ小説的な恋愛模様から話は始まりますが、「LANDS」の内部の葛藤や現代の音楽業界の内側を描いた話がメインな感じの、青春バンド映画です。

小林武史監督はこれが映画初監督作品なのですが、ミスチルやマイラバのPVを見る限り毎回クオリティが高いのできっと大丈夫・・・と思いつつも、見るまでは映画としての出来となるとどうなのかちょっと不安もありましたが、予想以上に凄い良かったです。

「元気」をアルミがアレンジする場面とか、後半の某場面の長回しとか、ラストカットの感じとか・・・ヤバいです。とてもこれが映画初監督とは思えないくらい良いです。

因みに、岩井俊二監督はクレジットでは今回プロデュースと脚本(と歌詞)のみですが、全体的に感じる雰囲気は「スワロウテイル」「リリィ・シュシュのすべて」の流れをまさにがっつり受け継いだ感じがします。
予告編を見ていたらもっと変化球(恋愛物)で来るかと思っていましたが、思いの外ストライクゾーンを狙って150kmの直球を投げてきた感じとでもいいましょうか・・・。

岩井俊二監督とはまた違う感じがする所もあって、岩井監督の場合は映像の流れで編集している感じがしますが、小林監督の方は音楽の流れの方を重視して編集している感じがします。

あと、バンド物だけにとにかく音楽が重要な要素ですが、この辺り、さすが!という感じです。
メインの音楽について語ると若干ネタバレになるのですが、とにかく良いです。
ちなみに挿入歌の方もニヤリとします。

赤西ファンの人達だけでなく、岩井俊二監督の映画が好きな人・小林武史監督の音好きにはおすすめです。


−2回目鑑賞−

改めて見ると、この映画は歌の使い方がとにかく上手い。
劇中の曲の中でLANDSの曲は何曲も流れますが、メインで使われているのが3曲あります。

一番メインで使われているのがLANDSが一気にメジャーになるという設定の「元気」。
劇中では最初にナツが曲を作って、まず車中でアサコに演奏していますが、この時は周りの雑音と船の汽笛の音が流れるだけで、曲自体は観客である我々には聞こえないという演出です。
そして、その後デモテープを聞いたユカリが、これを流行りの曲にアレンジするよう、アルミに指示して全然雰囲気の違う曲調になってしまうのです。
さらに曲が長すぎるからサビの後のフレーズをカットするように指示してアルミとユカリが揉めて、完成したバージョンが劇中に流れます。
この曲がLANDSの転機になって、後半の展開へと流れて行くのですが、その結果ナツとアサコが別れる場面で一人になったナツが部屋で弾いていたのが、この曲のオリジナルバージョンです。
しかも、ここでナツが歌っているのが、まさにあのカットされてしまった部分です。
ここで初めて、この曲をナツがどういう気持ちで作ったのかが、わかるような気がする場面です。

「20歳の戦争」は最初にアサコがCDをもらってブランコで聞いて涙を流していた曲です。
曲が流れていませんが、アサコが口ずさんでいる歌詞でそれがわかります。
次にユキヤが一人でスタジオに残っている時に、ナツの声をロボットに変声しながらエレキをバイオリンみたいにしてものすごいアレンジで演奏しているシーンの曲として流れます。
アサコが感動するのも無理はないですね。
そしてLANDSの確執があって、再びこの曲が流れます。
ユカリが感動する場面ですが、セリフが殆どないのにこの曲が流れてきたら思わず泣けてきて、歌と言うのはずるいですね。
そしてラスト、アサコがナツのいる201stに行って、ナツが歌っているのがこの曲です。
ナツはブースの中にいて、外に声は流れていないように見えますが、アサコがナツの口の動きをみて何の曲を歌っているのかを知って、口ずさんで泣いている・・・ここで最初に繋がるという訳です。

エンディングテーマ曲にもなっている「BANDAGE」は、LANDSが練習している所で使われています。
練習中にナツが問題を起こして途中で演奏がグダグダになってしまう曲ですが、スタッフロールではきっちり聞く事ができます。

音楽はこのくらいにして、他に、最初に練習スタジオに行った時に、壁の黒板には「NO MUSIC NO FUTURE」と書かれていたのですが、後半の場面でスタジオが出てきた時には「NO FUTURE」の部分が読めないように汚れています。
この意味は・・・


さらに、ナツの部屋ですが、最初にアサコがやって来た時にはただのぼろいアパートに見えますが、クライマックスのシーンでは同じ部屋とは思えないくらいに幻想的な部屋に見えます。
同じセットなのに、映し方でこんなに違ってみえるというのが面白いです。
このクライマックスのシーンは、前述の音楽の使い方もいいのです。
さらに、かなりの長回しの中で、主演2人の演技も見応えがありました。
カメラワークも、カット数が少ないのにカメラの動きが見事で、1カットの中に多彩なカット割りが生まれているという、これも見所です。
と、言う訳で2回目見てもこのクライマックスのナツの部屋でのシーンは、近年稀に見る名シーンでした。

DVDでもまた見たい。誰かに教えないで自分の中で大切にしておきたい映画です。



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