M o v i e
『ゴールデンスランバー・その2(謎とき)』
[感想 -COMMENT-]

とにかく観てて謎が多かった映画「ゴールデンスランバー」ですが、ちょっと整理して、僕なりに謎を解消してみたいと思います。

ネタバレ全開で書くので、まだ観ていない人は読まない事をお勧めします
※因みに今回、原作は読んでいないので、原作の方で解かれている謎があったり、矛盾してくるかもしれませんが、映画の方を観てのあくまで個人的意見と言う事でご了承ください。

1、「結局の所、犯人は誰だったのか」

まず、この謎です。映画では主人公青柳が森田に「お前、オズワルドにされるぞ」と言われる事から事件がはじまります。
つまり森田は、犯人が誰か知っていた(もしくは見当がついていた)という事になります。
森田は「オズワルドは共産党のビラ配りをさせられていた」といっています。さらに警察に対して明らかに不審な態度をとっている。
つまり森田は、今なお歴史上真相が解っていないケネディ暗殺事件に関して、オズワルド犯人説ではない説を信じているという事になります。
推測ですが、おそらく森田は「CIA犯人説」の方を信じていて、青柳に対して「お前に同じ事が起こる」と言いたかったのではないかと思います。

しかしそうなると、さらなる謎がおこります。
ケネディ大統領時代のアメリカならいざ知らず、現代において、わざわざ政府なり何処かの機関が首相を暗殺して、その罪を一般市民にかぶせるのには無理があるのではないでしょうか。
現に、映画でも謎の女は出てくるは、別の誰かを整形させて替え玉を作った上にアサシンまで用意したりと、やり方が派手すぎます。
こんな手の込んだ事をして青柳を犯人に仕立て上げるメリットはあまり多くありません。
もし仮に政府内の誰かが企てたたくらみなら、バレた時のリスクの方が多きすぎます。

そもそも、テロなら外国の工作員とかの仕業に見せかけた方が手っとりばやいはずでしょう。

では犯人は一体だれなのか。そしてその目的はなんなのか。

予想1、クーデター説
政府内部で首相のやり方に反対していた何処かの派閥が、秘密裏に首相を無き物にしようと画策していて・・・というやつです。
可能性は高そうですが、上記の理由によりなんか中途半端な感じがします。

予想2、森田犯人説

これはミステリの定番です。死んだと思っていた森田が犯人で、実は裏ですべてを企て、操っていた・・・
ダヴィンチ・コードでも、壮大な陰謀だと思っていたら実はすべて単独犯の仕業だったというオチがありますが、これもきっと同じ・・・では無かったですね。(結果論)

予想3、香川照之説
これは無理です。そもそも彼が黒幕なら、主人公を見つけたらさっさと撃てばいいのです。あとの事は用意していた替え玉の方にやらせればいいだけなのです。

予想4、ともだち説
この説だと、謎はすべて解けます。
ラジコンヘリの謎の女、森田の車に爆弾を仕掛けた人物、笑いながらショットガンンを撃ってくる警官、胡散臭いアイドル、香川照之・・・全て友民党の信者なんです・・・
そう、全てグルです。
巧妙に仕組まれていた事だったんです。
それも全ては、ともだちが日本を支配する為に・・・な訳ないか。

−−−−−−−−−−

謎の続きです。
と、その前に一つ僕が思う事を言っておきましょう。

ミステリーには大きく2種類があると思います。
一つは謎解きが軸になっているモノ。
シャーロックホームズや綾辻行人や有栖川有栖などです。
こちらは謎(トリック)がまずあって、そのトリックを成立させる為に登場人物の設定があるタイプです。

もうひとつは、謎解きよりもドラマがメインになっているもの。
例えば宮部みゆきや東野圭吾、松本清張などでしょうか。
こちらは、時として謎解きはおまけ程度になる事もあります。

「ゴールデンスランバー」はおそらく後者の方です。
つまり、ミステリの枠組みとしてトリックは作ってあるものの、話の筋がややこしくなりそうであればバッサリと切り捨ててでもドラマを優先して作っている作風です。
というかそう思います。


それでは本題に行きましょう。
「ゴールデンスランバー」の犯人は一体だれか。

おそらく、犯人(黒幕)は次期首相か、その側近です。
この前提で話を進めます。(動機は後ほど)

で、「警備局総合情報課」の佐々木(香川照之)と小鳩沢は当然、この黒幕を知っています。
ただし、佐々木と小鳩沢が実行犯ではない。

本当の実行犯は勿論、防犯カメラに映った「ラジコンヘリを動かしていた男」です。
恐らく黒幕は裏社会の人間に依頼して、「ラジコンヘリの男」がヒットマンとしてやってきたと考えられます。
もちろん、この実行犯が「青柳そっくりに整形している人物」です。
そして何故、青柳(堺雅人)は犯人に仕立て上げられたのか。
これは偶然です。

つまりこの「実行犯」が自分の犯行をなすりつけるために、自分に背格好が似ている人物を探していたら、たまたま青柳が条件に合っていた、という事です。(おそらく2年前のTVを見て)
そして全てを周到に準備をして、青柳が犯人であるかのように見せる為、青柳になりきっていたのです。
宮部みゆきの「火車」のパターンです。

そして佐々木の方は最初から事件に絡んでいたのか、後で事実を知ったのかは解りませんが、黒幕が誰かは知っていたのは間違いないでしょう。
そして、青柳が犯人であるかのように情報を操作するのが彼の役割です。

「ラジコンヘリの女(相武紗季)」も森田(吉岡秀隆)と同じく、佐々木か実行犯に弱みを握られ、強制的に青柳に近づくように仕向けられたのです。

黒幕を知っている佐々木は、事実が明るみになると大問題になるのはわかっているので、暗殺が成功した直後に、証拠隠滅を図ります。
森田と共に青柳が死んでしまえば、この犯罪の事を知っているのは後は情報課の佐々木と小鳩沢、「ラジコンヘリの女」と「実行犯(そっくりさん)」だけという事になります。
女は森田同様、消されていると考えられます。
これで、黒幕の完全犯罪は成立します。

ところが、青柳が逃走してしまった事で計画は崩れました。
もし青柳が事実をばらしてしまうと、黒幕の方に操作の手が回る可能性があります。
佐々木としては、そうなる前に青柳を消さねばならないのです。
やたら小鳩沢が物騒にショットガンをぶっ放していたのは、殺さなければ自分が殺られるとヤケになったからでしょう。
保土ヶ谷(柄本明)が青柳を手助けしようとする心理も納得です。かつて裏世界の人間だったと、保土ヶ谷は言っています。
保土ヶ谷はおそらくこの事件の裏に、裏世界の人間が絡んでいる事を悟ったのです。
それで青柳が犯人ではないと信じたのです。

さて、青柳はどうすれば自分の無実を証明できたのか。
答えは勿論、「真犯人を捕まえる」事です。
「逃亡者」で言う所の「義手の男」です。
真犯人とは勿論実行犯「ラジコンヘリの男」、それ以外に無実を証明する手はありません。

しかし結果的にそれは出来なかったのです。
その理由は、既に死んでいたからです。
エピローグで見つかった死体。これこそ、この実行犯以外に考えられません。
恐らく彼は、ラジコンヘリで暗殺に成功した後、佐々木の指示で何処かに隠れていたのです。
そして佐々木に殺されたのです。

佐々木は青柳のテレビ中継を阻止する事に成功した後、マンホールに逃げようとする青柳を撃っています。
その後、青柳の死体は見つからなかったものの、手応えはあったので恐らく青柳は逃げる途中で何処かで死んだのだと考えます。

しかし、死体が無いと世間は納得しません。
そこで、替え玉の方の死体を使って、青柳が死んだと世間に公表したのです。
これでやっと、黒幕(次期首相)も安心です。
(海外でこのニュースを聞いたというナレーションがこの事を物語っています)

実は生きていた青柳は、川で再開した凛香(貫地屋しほり)のコネを使えば、もう一度テレビに出る事は出来たのですが、真犯人を捕まえる事が出来なくなった以上、たとえ自分が生きていると世間に知らせても、もう犯人の汚名を晴らす事は不可能になってしまったのです。

それで、今度は青柳の方が別人に整形するしか手は無かったという訳です。
そしてラストのシーンにつながる・・・という訳です。

これが僕なりに考えてみた「ゴールデン・スランバ−」の謎解きの部分です。

さて、なぜこの謎が謎のままなのでしょう。
それは「黒幕」の動機が語られなかった事が理由です。
これを語りだすと長くなるし話が脱線するのです。
「ゴールデン・スランバー」のドラマと言うのは勿論、タイトルにもあるビートルズとか、樋口(竹内結子)との思い出の部分です。
その話をする為には、黒幕の動機なんて語ってもあまり意味がありません。
だから、おそらくドラマ部分を強調するため、あえてトリックは省いているのだと思います。

つまり最初に書いた、ミステリの枠組みとしてトリックは作ってあるものの、話の筋がややこしくなりそうであればバッサリと切り捨ててでもドラマを優先して作っている、という事です。


違ってたらごめんなさい・・・



[Top Page]