M o v i e
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ある中学校の1年のクラスにおける終業式から始まり、2年の終業式に至るまでのクラスの生徒達の学園ドラマです・・・ 原作のミステリが話題になったり、映画も国内でハリウッド大作の「アイアンマン2」を抑えて興収1位を記録したり、エヴァンゲリオンっぽい予告編が何かと気になってはいましたが、期待通りの良い映画でした。 話は1年B組の終業式の日、先生が「告白」をする所から始まるのですが、いきなり普通に衝撃的な事を言い始めるのです。 かつてバトルロワイヤルで「今日はちょっと皆さんに殺し合いをしてもらいます」という衝撃的な始業式がありましたが、「告白」もまたBRに負けない終業式です。 さしずめ教師キタノならぬ教師モリグチとでもいいましょうか。 ちなみにバトルロワイヤルの原作小説の方では教師キタノは坂持金発という名前で露骨に金八先生だったのですが、この映画の先生も黒板に漢字を書いたりと、ちょっと金八先生を意識させられます。 金八先生大人気ですね。 そしてその後は、他の登場人物達の「告白」によってストーリーが進んで行きます。 犯人探しでもっと時間を使うかと思ったのですがそうでもなく、予想以上に話の展開が速くて、どんどん意外な展開になっていき、とにかく先が気になります。 1人とんでもない悪い人がいる、というより登場人物それぞれの心の闇が悪い方に相互作用し、どんどん悪い展開になっていくという、現代版シェイクスピアとでも言ったかんじです。 そして作中で「罪と罰」のラスコーリニコフについて少年Aが語る場面がありますが、まさにこの映画は、現代版ドフトエフスキーですね。 森口先生の後に担任になった寺田先生は自らの呼び名を「ウェルテル」と呼ぶように言いますが、妙になじみのないあだ名です。 ゲーテの「若きウェルテルの悩み」と「ウェルテル効果」から取っているのか・・・分かり難いけど、バッド・エンドを示唆しているというフラグでしょうか。 さらに、「死に至る病」という言葉をも少年Aが言っていますが、これはセーレン・キェルケゴールの哲学書「死に至る病」です。 (エヴァンゲリオンのTVシリーズのサブタイトル「死に至る病そして」もありますが、元ネタは一緒なので。) 唯一のまともキャラは委員長・北原美月でしたが、彼女のプライベートは実は「NHKにようこそ」の柏先輩みたいな薬品マニアでした。 しかも「ルナシー事件」の犯人に憧れて手首に「L」の文字を入れてる一面もあったりします。 さすがにあの文字、タトゥーではないと思うが。学校では腕時計で隠しているあたり、表向きは優等生の委員長、その実はゴスっ娘って感じですね。 さらにモンスターペアレントな母親とか出てくるし、他にもイジメ・DV・教育問題・少年犯罪・HIVと見事に現代日本の問題を片っ端から集約したようなB組の生徒たちです。 制裁のくだりとか寄せ書きのくだりの陰湿さは半端ないです。 それでいて売春・レイプ・麻薬や宗教絡みの話・銃乱射は無いところが、日本的という気がします。 でも、さすが中島カントクというだけあって、映像と音楽が非常にスタイリッシュで綺麗に仕上がっていて、残酷シーンが多い割にはあまりエグさを感じないので、やたら多く入っていたカップル達も観終わって気まずそうな雰囲気はあまり出していない感じでした。 最近この手の話は韓国映画に押されてて日本映画は爽やかなものばかりになってしまっていましたが、久々にダークな日本映画が観れてうれしい限りです。 |