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『インセプション』
[感想 -COMMENT-]

映画「インセプション」観ました。

他人の夢の中に入り込むことが出来る機械がある近未来の話で、夢の中で色々なミッションをこなそうとする人たちの物語りです。

結局仮想空間と現実世界の間を行ったり来たりするという話なので「マトリックス」とか「イノセンス」とかと同じ構造なのですが、マトリックスの仮想空間で死んだら現実の方でも死んでしまうのに対して、インセプションは所詮夢なので、目を覚ますだけです。

でもこの映画が面白いのは、夢の中でもさらに夢を見ることが出来て、夢の世界が何層にも分かれているということです。

途中から荘子の「胡蝶の夢」のように、夢なのか現実なのかわからなくなってくる夢の中で夢を見ている訳なので目が覚めてもそこが現実かまた別の夢の中なのかがわからない訳で、つまり目が覚めるとまた別の夢の中というわけです。

さらに夢の世界では想像力次第で物理法則を変えてしまうことができるんですね。
パラレルワールドでパラドックスな世界が、「夢」の世界というだけで全て説明できてしまっているのです。
夢、恐るべし。

そして夢の世界では夢の階層が深くなるにつれて、時間の流れが遅くなっていくらしいです。
夢の中で死ぬと通常は目が覚めるだけですが、強力な鎮静剤で眠っている間には目覚める事ができなくて、「虚無の世界」に落ちてしまうのだそうです。
この「虚無の世界」は劇中での時間の流れ方から見て、かなり深い深層心理の中に閉じ込められるという事のようです。
と、一見ややこしい設定ですが、ふと「電脳コイル」という子供向けアニメを思い出すと、割とわかり易く理解できました。
夢の中の仮想空間か電脳メガネを通してみた電脳空間かの違いはありますが、解釈すると、「夢の中の夢の世界」は「電脳世界の古いバージョンと新しいバージョン」みたいなものです。
「虚無の世界」はつまり大黒市でいうと「コイルドメイン(古い空間)」です。

謎の主人公の奥さんはまさに電脳コイルの「ミチコさん」です。
ミチコさんは、イサコの兄が交通事故で死んだショックでの精神的傷害をバーチャル空間で精神治療するためのプログラムが元でしたが、
インセプションではディカプリオの記憶の中の深層心理にある奥さんの記憶と「罪の意識」が合わさってディカプリオの前に度々現れるようになったと思われます。
機械で同じ夢を共有しているので、他の人にも生きているように見えるという事です。
襲ってくる敵は、おそらく産業スパイ対策として催眠術のようにロバートの深層心理の中に潜伏させられていたものと思われます。

そして凄いのは、それをわかりやすく映像で表現しているところです。
何層にもなっている夢の中の夢のそのまた夢で、同時に展開していて、一つの世界で起こっていることがリアルタイムで他の世界にも影響が起きるという状態なのに混乱しないでみられるようになっているのはさすがです。

ラストの意味についても気になるのですが・・・ネタばれだしそれはまた今度に。


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