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『ノルウェイの森』
[感想 -COMMENT-]

「ノルウェイの森」
1987年に刊行された村上春樹原作小説の映画です。

結論からいうと、前半は良く出来ていたと思います。
しかし後半は納得いかないというのが自分の感想です。

もともと原作小説の方が日本だけで1000万部を超える超ベストセラーな上に映像化が難しそうな内容なだけにハードルは高かったと思いますが。

主人公の「ワタナベ」を松山ケンイチと直子を菊地凛子さんが演じているのですが、2人の演技はさすがです。
しかし原作が「100パーセントの恋愛小説」と謳っている小説に対して、映画の方は最近の恋愛映画と同じ様に見ていると何か違う・・・という感じです。

凛子さんの演技が役に入りきって、「狂って」る所はホントにキテます。

シーンによっては観ていて恐怖を感じるくらいです。恋愛映画なんて甘い物ではないんです。 「セカチュー」「時かけ」のように絶望感の中にもどこか爽やかさを感じさせることはなく、そこにあるのはただひたすら世界への深い絶望だけです。どちらかというと「ミレニアム」の方が近い感じです。あるいは寺山修二の世界です。

なぜトラン監督は日本人の嗜好に合わせてもっと「恋愛映画」として撮らなかったのか、よくわかりませんが、トラン監督はこう原作を捉えたという事でしょうか・・・

しかしなによりも、「レイコさんの歌」が全然聞けないのは辛いものがあります。

レイコさんの歌がないと、後半の超重要なシーンの意味が全然違うものになってしまうのです。
小説冒頭の「ボーイング747のスピーカーから『ノルウェイの森』が聞こえてきて・・・という伏線もなかったことになっている訳で。
これだけは無理してでも入れてくれないと、「ノルウェイの森」をやる意味がない。

−− quotation −−

 レイコさんはビートルズに移り、「ノルウェイの森」を弾き、「イエスタデイ」を弾き、「ミシェル」を弾き、「サムシング」を弾き、「ヒア・カムズ・ザ・サン」を唄いながら弾き、「フール・オン・ザ・ヒル」を弾いた。僕はマッチ棒を七本並べた。



彼女は一息ついてタバコを消してからまたギターをとって「ペニー・レイン」を弾き、「ブラック・バード」を弾き「ジュリア」を弾き、「六十四になったら」を弾き、「ノーホエア・マン」を弾き、「アンド・アイ・ラブ・ハー」を弾き、「ヘイ・ジュード」を弾いた。
「これで何曲になった?」
「十四曲」と僕は言った。



レイコさんは四十九曲目に「エリナ・リグビー」を弾き、五十曲めにもう一度「ノルウェイの森」を弾いた。
五十曲弾いてしまうとレイコさんは手を休め、ウィスキーを飲んだ。

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そんなわけで、前半の部分は割と良かったけど、後半は物足りなさに身悶える映画・・・でした。
もっとも50曲は普通に映画で無理だろうが・・・


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